2023年2月28日-3月3日、幕張メッセで開催されました第28回国際製パン製菓関連産業展(MOBAC2023)に出展させていただきました。ブースやセミナーには多くの方にご来場いただきました。この場を以て感謝いたします。そこで頂いたご質問で一つ思う所あり、紹介させてください。
カビを含めた細菌や酵母の製品汚染と対策についてご説明したのですが、このような質問を頂いたのです。
「…酵母って良いものじゃないんですか?」
『え?』
混乱しながらもお答えし、その後大いに反省しました。パン屋さんにとって酵母といったら有用微生物以外のなにものでもないのだと。我々有害微生物を扱っている者としては酵母と言ったら食品汚染や病原菌などがすぐに思い至るところです。もう少しお客様の認識を考えた説明を行えればと反省しました。今回はその反省を含め、酵母の食品汚染について簡単にご説明いたします。
パンの発酵に使われる酵母、お風呂場の目地やみかんなどに生えるカビ、この二つは「真菌(しんきん)類」と呼ばれる同じ仲間です。そして、二つの生育環境はよく似ています。カビに比べ酵母は高湿環境に多く、酸素がなくても生育するという特徴があります。カビは酸素が無いと生きていけません。また、一口に酵母といってもその種類がいくつあるのか誰もわからないでしょう。我々が実際の製品から検出した酵母だけでも何種類もあります。その中でも報告事例の多い酵母を一つご説明しましょう。
Pichia anomala(ピキアアノマーラ)(もしくはWickerhamomyces anomalus)。aromaを彷彿とさせる名前ですが、臭気が強い酵母なのです。その臭いはなんとシンナー臭。製品の袋を開けて「ボンドが入っていませんか?」などお客様からお申し出をいただくことも。とても食べようかという気にはなれません。完全に事故品です。汚染原因として複数考えられますが、一つ特徴としてこのような酵母はアルコールに強く、栄養にしてしまうような特徴があります。薄い濃度のアルコールが常時散布されているような場所はこのような酵母汚染を起こしていることがあります。
弊社ではこのような汚染源調査も承っています。何をやってもダメだと神頼みになる前に、是非ここは弊社にご相談ください。一緒に解決していきましょう。
こちらがピキアアノマーラです。
ぷっくりとした可愛らしいフォルムです。